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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

猫の気管に発生したリンパ腫
【はじめに】 リンパ腫とは本来は免疫機能の一部である白血球のうちのリンパ球がガン化して腫瘍を形成したものを言います。 猫においてリンパ腫は動物病院で最も診断することの多い悪性腫瘍のうちの一つで、鼻腔、縦隔、消化器、腎臓、皮膚等あらゆる臓器に発生します。猫では稀に今回のように若年齢で発生することもあります。
今回動物医療センター赤坂において比較的発生部位としては珍しい、気管から発生したリンパ腫の診断、治療を行ったためご報告いたします。
【症例】
動物種:猫 MIX
年齢:4歳
性別:去勢雄
【主訴】
数週間前から食餌のスピードが落ちてヒューヒューという呼吸音がする、との事でセカンドオピニオンとして来院されました。
【診察、診断】
来院時に頸部の皮膚の上から触知ができる1.2cm大の腫瘤を確認しました。触診上で腫瘤は硬く、皮膚からではなく気管やその周囲から発生しているように感じました。
呼吸はやや全身を使って行うような吸気性の努力呼吸と呼ばれる状態でした。
まず初めに猫の状態に配慮しながら血液検査、猫のエイズ、白血病のウイルス検査、頸部のX線検査頸部と腹部の超音波画像検査を実施致しました。
血液検査、ウイルス検査に異常はありませんでしたが、頸部X線検査にて気管から発生する腫瘤を認めました。また頸部の超音波画像検査にて明らかな腫瘤性病変を認めました。
気管から発生した腫瘤が今回の症状の責任病巣だと疑い、超音波画像ガイド下で細胞診を実施しました。
結果は中〜大細胞性の比較的悪性度の高いリンパ腫でした。細胞タイプを判断するクロナリティ解析はT/B細胞性でした。
※赤丸の中の白丸に見える部分が気管から発生した腫瘤です。青矢印内の黒く抜けた部分が気管です。
※細胞診の結果です。
診断後すぐに抗がん剤を使用した治療を開始しました。
猫に抗がん剤を投与した際に出る抗がん剤による副作用はその子その子で食欲元気不振、嘔吐、下痢、発熱、脱毛等で様々ですが、今回は幸いほぼ副作用は発現せずに治療を実施する事ができました。
『抗がん剤』と聞くと人医療でよく言われる本当に辛い副作用をイメージされる方が多いと思います。確かに一部の子で人医療同様の辛い副作用が出てしまう可能性はありますが、人医療で使うような副作用が強く出る容量で抗がん剤を使用することは基本的には無いので、多くは日常生活に大きな影響がないレベルの副作用である事が多いです。
今回は3回目の抗がん剤使用で寛解(腫瘍が目には見えないぐらいに小さくなっている状態)状態となり、一般状態も改善しました。
治療開始から1ヶ月後にかかりつけ医に戻られましたが、治療開始から3ヶ月後の現在も寛解状態を維持できているとの事でした。
リンパ腫は怖い病気ですが、決して治療を諦める必要があるものではありません。リンパ腫と診断されたが治療に踏み切れない、今回と同じような症状がある、その他リンパ腫についてご質問があれば心置きなく動物医療センター赤坂にご連絡ください。
執筆担当
獣医師
西田 純平

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