犬のネギ中毒
本日は犬のネギ中毒についてお話し致します。
ネギは犬が食べると中毒を引き起こす可能性がある事は飼い主様の間でも広く知られているところですが、実際どのようなどれくらい食べるといけないのか?ネギは白ネギだけか?症状は?等詳しい事はご存知ない方も多いのではないでしょうか?
【病態】
ネギ中毒とはネギを誤食して引き起こされる中毒症状の事ですが、ネギと言ってもそれは白ネギに限った事ではありません。玉ねぎ、ニンニク、にら、ラッキョウ、エシャロット、わけぎ、などのネギ属でも症状を引き起こす可能性があります。
特に毒性が強いとされるのは玉ねぎとニンニクです。
これらの食べ物を摂取すると、有機硫化化合物が血液成分であるヘモグロビンを酸化させることで赤血球が脾臓において破壊されやすくなり、溶血性の貧血を起こすようになります。
【症状】
一般的にはまず嘔吐、軟便や下痢、元気食欲低下が見られます。貧血が進行すると粘膜の色が白くなったり、呼吸や心拍が早くなる事もあります。また黄疸で粘膜が黄色くなったり、赤色〜褐色の尿をする事もあります。
写真はネギ中毒を起こした犬の尿です。褐色に変化をしており貧血を認めました。
【中毒量と発症時間】
ネギ中毒は摂取した食品が加熱調理や乾燥加工されていたとしても中毒症状を発症する可能性があります。玉ねぎ中毒に関して明確な摂取中毒量は分かっていませんが、一般的には1kgあたり15~30g程食べると中毒症状が出る可能性があると言われています。しかしながらそれより少ない量でも中毒症状が出てしまう子もおり、中毒量には個体差があるのでまずは絶対に食べさせない事が非常に重要です。また秋田犬や柴犬は遺伝的にネギ中毒への感受性が高いと言われています。
中毒症状は一般的には摂取後1日から数日で、最大10日程度症状が継続する可能性があります。
【治療と予後】
明確なネギ中毒に対する解毒薬は存在しません。ネギを食べて数時間以内の子はまず催吐処置や胃洗浄を試みます。一般的には中毒症状が出てしまった子には支持療法として点滴を行い腎臓の保護をする事、重度貧血の場合は輸血が必要な事もあります。ビタミンCやビタミンE製剤が抗酸化作用で治療の一助になる可能性を示した文献もあります。
中毒症状が重度の場合は慎重な治療が必要で、最悪の場合死に至る事はありますが、一般的にはしっかりとした支持療法で快方に向かってくれる子がほとんどです。
私自身は夜間の救急現場含めて多くの誤飲症例を経験しておりますので、ネギ以外でも誤飲をしてしまった際はお気軽にすぐにご連絡、ご相談ください。
執筆担当
獣医師 西田