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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

犬の乳腺腫瘍
⚫︎概要
犬の乳腺腫瘍は避妊をしていない中高齢のメスに多く発生する腫瘍です。稀にオスにも発生することがあります。
犬の乳腺腫瘍は猫と異なり、半数が良性の腫瘍と言われていますが良性と悪性が混合しているもの、良性であっても悪性に転化するものもあるため注意が必要です。

⚫︎症状
乳腺組織にしこりが触れられます。通常乳腺は左右5対あり、第1乳頭〜第3乳頭は腋窩リンパ節へ、第4乳頭〜第5乳頭は浅鼠径リンパ節へ繋がっています。
乳腺組織の多い第4〜5乳頭に発生することが多いと言われています。
乳腺腫瘍特有の症状があるわけではなく、飼い主様が触っていてしこりに気づいて来院されることがよくあります。
進行すると自壊して出血したり、悪性の腫瘍だった場合は特にリンパ節や肺に転移することがあります。

⚫︎予防
犬の乳腺腫瘍は女性ホルモンと関係があり、早期の避妊手術で予防することが可能です。
初回発情前に避妊をすることで乳腺腫瘍の発生率を0.5%まで下げると言われています。
ですので、将来子犬を望まないのであれば早期の手術をお勧めしております。
当院では通常の開腹手術に加え、腹腔鏡下で行う痛み・傷を最小限にできる手術も取り入れています。
腹腔鏡下での予防的避妊手術についての詳細はこちらをご参照ください。『腹腔鏡下での避妊手術』

⚫︎診断
身体検査・細胞診検査・画像検査(レントゲン検査・超音波検査・CT検査)・病理検査などをもとに診断していきます。
細胞診検査では他の腫瘍の可能性がないか腫瘍の種類を確認し、手術適用であるか判断します。画像検査では転移の有無を調べます。
また、実際に良性か悪性か確定診断をするためには摘出後の病理検査が必要です。

⚫︎治療
治療には外科療法・放射線療法・化学療法があります。
第一選択は外科療法になります。
放射線療法や化学療法は完治を達成することはできません。
しかしすでに肺などに転移が見られる場合や外科手術が不可能である場合は放射線療法や化学療法を提案することもあります。
切除する範囲は個々の状態や腫瘍の形状によって異なります。
方法としては①罹患乳腺のみの切除、②領域乳腺切除、③片側乳腺切除、④両側全切除があります。
⚫︎症例
今回来院した子では、左第3乳頭に直径1cm大、第5乳頭に2ヶ所0.5cm大のの腫瘍が認められ細胞診検査を行ったところ乳腺腫瘍である場合には良性の乳腺腺腫である可能性が高いと示唆するという結果でした。
実際の細胞診の写真が左下の写真1になります。
今回、画像検査なども合わせて行ったところ、転移が見られる所見はなかったため片側乳腺切除を行いました。
切除後の病理検査の結果が右下の写真2になります。3ヶ所において結節性の腫瘤が形成されていますがいずれも良性の乳腺腫瘍と診断されました。
術創の写真が写真3です。
予後は良好で、5日間の入院で元気に退院されました。

わんちゃんの乳腺腫瘍を早期発見・早期治療を行うためには毎日のスキンシップが大切になってきます。
触っていて少しでもおかしいと感じた時は早めの来院をおすすめします。
何かわからないことなどございましたらご相談ください。


動物医療センター 赤坂
獣医師 小針

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