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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

犬と猫の皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症とは皮膚糸状菌と言われる真菌が毛包や皮膚の角層に感染する疾患です。
動物から人間にも感染する病原体なので注意が必要です。

【病原体】
Microsporum(小胞子菌属)
Trichophyton(白癬菌属)
Epidermophyton(表皮菌属)

【疫学】
基本的に猫はなりやすく、犬は稀です。
一方で猫は発症した際、症状が軽いことが多く犬は猫より症状が重く出ることが多いです。
以下の条件にあてはまる場合はかかる可能性が高くなります。

・若齢
・老齢
・基礎疾患をもつ
・強いストレス下で生活している
・他の動物と接触する機械が多い
・多頭飼育をしている

【感染ルート】
動物同士の直接的な接触、感染した動物の毛や鱗屑(所謂ふけ)との接触が多いとされています。
また、汚染地域の土壌から感染することもあります。

【症状】
脱毛斑、鱗屑、痂皮、毛包性丘疹、落屑、爪の炎症や変形、紅斑
稀なものも含めると症状は多岐に渡ります。
全身どこでも感染を起こす可能性はありますが、好発部位は頭部、四肢の手先です。

※写真は脱毛の様子 (犬と猫の皮膚科臨床から引用)
※写真は紅斑の様子 (犬と猫の皮膚科臨床から引用)
【検査】
・ウッド灯検査
ウッド灯と呼ばれる紫外線を皮膚に当てる検査になります。真菌から排泄されたトリプトファン代謝産物を360nmの紫外線により発光させます。
ウッド灯での検査は非常に容易行えますが、検出率は仮に感染成立していても50%程度と言われています。

※写真はウッド灯です
・直接鏡検
感染毛を採取し、顕微鏡で観察します。

・培養検査
DTM培地に採取した毛髪などを入れ培養します。

・PCR検査
毛髪など一部を採取し、遺伝子検査を行います。

【治療法】
基本的には局所治療と全身治療を行っていきます。

・全身性抗真菌薬

・局所療法(外用療法)

・毛刈り
感染被毛や落屑の環境中への飛散を防ぐことができます。
一方で動物への感染拡大、重度の感染汚染をおこすため動物の状態により毛刈りをするか決めます。

・環境制御
動物を隔離し、洗浄しやすい部屋に入れてください。
前述した通り、毛や鱗屑からも感染するため、部屋の消毒及び掃除をよく行い、汚染された塵埃を除去します。

掃除→週2回以上、掃除機で完全に被毛や落屑を除去する。
消毒・洗浄→次亜塩素酸0.5%溶液に5分間おく。繰り返し行うと非常に効果的であるとされています。

また多頭飼育をしている場合、他に飼育している動物が症状がなくても無症状キャリアになってしまい感染を広めてしまう可能性があるので、マッケンジーブラシ法による真菌培養検査を全頭に実施することを推奨します。

・治療の中止時点
真菌培養が陰性になり、臨床症状が完全になくなったら一回中止します。
治療の中止までに少なくとも2回の連続した真菌培養陰性が必要です。

一般的には上記の治療で根治が見込めますが、治療には数ヶ月かかる子も多くいますので、忍耐強い治療が必要となります。

特にこの疾患は前述した通り、動物だけではなく人にも感染してしまうので、脱毛している、皮膚が赤い、フケがでているなどの症状がありましたらお気軽にご相談ください。
当院にはグループ内の提携病院にて皮膚専門獣医師も診療を行っていますので、ご興味ある方は合わせてご相談ください。

執筆担当:川嶋

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