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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

犬の糞線虫
【病因】
糞線虫(Strongyloides stercoralis)は主に子犬、とくに多頭飼育の環境下での子犬に寄生します。この寄生虫は外界で生きることができる運動性の幼虫を産出し、幼虫は傷のない皮膚や粘膜を穿孔します。幼虫が皮膚から侵入すると、毛細血管やリンパ管を経て肺循環にのり、心臓から肺へ到達したのち、気管支→気管→喉頭→食道→胃を通って小腸で成虫となります。成虫は腸粘膜内に寄生し、ここで産卵します。この方法で罹患動物は体内で自家感染を起こし、短期間に大量の寄生虫が感染することになります。
また、ほとんどの動物は運動性の幼虫を含む新鮮便に暴露し、経口的に寄生虫感染を起こします。そのほかに授乳期の母犬から仔犬への経乳感染も見られます。糞線虫を都内で見ることは比較的稀ですが、動物保護施設やペットショップでの蔓延が感染源になりやすいです。

【臨床症状】
糞線虫が寄生した動物は粘液や血液を含む下痢を起こし、全身的に衰弱することがあります。寄生虫が肺を貫通した場合、寄生虫性肺炎を生じることもあり、多数が感染した場合死に至ることもあり、侮れない寄生虫です。

【診断】
病院内での新鮮糞便検査にて顕微鏡下で幼虫を検出し、診断します。一度の検査で発見できないこともあるため、必要に応じて2−3回検査を実施することがあります。

【治療】
線虫駆虫薬のフェンベンダゾール、フィラリア予防薬として知られているイベルメクチンなどを用いて治療を行います。

【人への影響】
犬糞線虫は人間に感染する恐れがあります。免疫抑制状態にある人、小児や年配の方などでは、糞線虫感染が「重篤な病態」に陥る危険性が可能性があるため、家庭内で犬糞線虫の発生があった場合には罹患動物の糞便に素手で触らないことやすぐに糞便を片付けることが重要です。

糞線虫以外でも難治性の下痢を呈した子犬から他の寄生虫が検出されることは珍しくないため、下痢を起こした子犬がいらっしゃる場合はお気軽にご相談ください。
執筆担当
獣医師  西田
※写真の青矢印が糞線虫の幼虫の顕微鏡写真です

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