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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)を認めた猫
●概要
普段の診療の中で、貧血の犬や猫に遭遇することは珍しくありません。
貧血の原因は赤血球の破壊や喪失が原因で起こる『再生性貧血』と、赤血球産生能力の低下を原因とする『非再生性貧血』とに大別されます。

原因はそれぞれ以下の様に細分化されます。
・再生性貧血–急性出血、溶血(自己免疫疾患、赤血球寄生性病原体、中毒、遺伝病)、など
・非再生性貧血–鉄やビタミン不足、骨髄疾患(腫瘍の浸潤、自己免疫疾患、感染、など)、慢性疾患、腎疾患、など

骨髄で赤血球が作られる過程で赤血球は
原赤芽球→前赤芽球→好塩基性赤芽球→多染性赤芽球→後赤芽球→多染性赤血球
へと順々に分化していきます。
今回当院において重度貧血で来院した猫を、多染性赤芽球から多染性赤血球のいずれかの段階の赤血球前駆細胞が免疫学的に破壊される疾患である『非再生性免疫介在性貧血』(non-regenerative immune mediated anemia: 以下NRIMA)と診断したためご紹介致します。
●症例紹介 今回来院された1歳の猫は,初診時に極めて重度の貧血を呈していました。貧血の度合いを示すPCVは正常参照値(32-45%)よりはるかに低く6%でした。
初診時に一般的な血液生化学検査、レントゲン検査、心臓及び腹部超音波検査、ウイルス検査、遺伝子検査、節足動物媒介の寄生虫疾患の検査を実施しましたが、貧血の原因となる様な明らかな異常は認めませんでいした。
そこで貧血が重度だった為輸血を実施しながら、骨髄の状態を調べる為の骨髄検査を実施しました。結果として上記の様に、多染性赤芽球から多染性赤血球のいずれかの段階の赤血球前駆細胞が免疫学的に破壊されるNRIMAと診断しました。

NRIMAの治療は一般的には免疫抑制療法として急性時はステロイドと輸血治療、維持期になるとステロイドと併せて免疫抑制剤を併用します。
今回、この子は当初ステロイドを用いて治療を行うも、反応せず貧血が改善しなかった為、猫での使用が複数例しか文献報告に無い『人免疫グロブリン製剤』という薬を使用しました。この薬は猫で使用した場合に、重度のアナフィラキシーショック症状を起こす可能性が報告されていますが、救命の可能性や緊急性を飼い主様とよく相談した上で今回使用に至りました。その結果使用後2日目から貧血が改善傾向に転じ、2週間後にはPCVは24%まで改善しました。貧血が改善傾向になったタイミングで免疫抑制剤である『シクロスポリン』の投薬を開始しました。しかしさらに3週間後にPCVが10%まで再度悪化した為、『シクロスポリン』が効いていないと判断して別の免疫抑制剤である『ミコフェノール酸モフェチル』の投薬を開始しました。その結果徐々に貧血は改善傾向に転じて使用後1ヶ月の現在PCVは21%まで改善しました。
今後もう少しPCVが改善下後に、徐々に投薬を減らしていくことができるかが今後重要となります。

※1今回副作用が出る恐れのある『人免疫グロブリン製剤』を『ミコフェノール酸モフェチル』の前に用いたのは、『人免疫グロブリン製剤』は『ミコフェノール酸モフェチル』に比べて治療反応が早く出る為、重度貧血で時間の猶予がない今回は『人免疫グロブリン製剤』を先に使用しました。
※2ステロイドは漸減中
貧血のセカンドオピニオンをご希望の方はお気軽にご連絡ください
動物医療センター赤坂
獣医師 西田純平
東京都港区赤坂7-4-12
TEL:03-5545-5119
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症例報告一覧