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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

猫の肺腫瘍
【はじめに】 犬と猫にも人間と同様に肺に肺原発の悪性の腫瘍が形成される事があります。中でも猫の悪性肺腫瘍は非常に進行が早いものが多く、発見された時点で既に全身に転移をしている事が多いのが現状です。
今回私たちは健康診断にて肺の腫瘤(腫瘤とは出来物の総称です。この時点では腫瘍とは断定されていません)を認めた猫の、肺腫瘤摘出を行い、術後経過が良好でしたのでご報告させていただきます。


【症例、主訴】
動物種:猫  年齢:12歳 性別:避妊メス 
他院にて健康診断を実施したところ、胸部レントゲン検査にて肺に腫瘤を認めた為、セカンドオピニオンとして当院を受診されました。本人の一般状態は良好ですが注意して観察すると時折咳の様な症状がある、とのことでした。


【検査】
肺の腫瘤が悪性か良性かを診断するには、腫瘤を摘出して生検を実施する必要があります。また超音波エコーガイド下で腫瘤に針を刺し細胞を採取、診断を行う針生検という侵襲性の低い方法もありますが、針生検を行うことで癌細胞が胸腔内に播種してしまう可能性があるため、根治が望める様な単一の腫瘤の場合は適応となりません。
まず今回私たちは手術による摘出が可能かどうか血液検査、レントゲン検査、胸部、腹部超音波検査及びCT画像検査を実施いたしました。
結果は左の肺に孤立性の腫瘤を認めましたが、リンパ節への明らかな転移は認めず、手術の麻酔に対してもリスクが少ない症例だと判断致しました。
レントゲン写真検査です。赤丸が肺腫瘤です。
CT画像検査です。赤丸が肺腫瘤です。
肺への超音波エコーガイド下での細胞診のイメージです。
【手術】
比較的体が大きな犬では『胸腔鏡』を用いた侵襲度の低い手術も実施可能ですが、今回は身体がそこまで大きくはないという事で、安全性を考慮して開胸による手術を実施いたしました。手術は大きな出血もなく終わり、無事腫瘤が存在した肺ごと摘出が完了しました。


【経過】
術後は3日くらいで元気や食欲が改善してきました。呼吸状態の悪化もなく予定通り退院となりました。
退院後の一般状態も良好です。


【病理組織検査結果】
肺の腺癌で摘出状態は良好でした。転移を示唆する腫瘍細胞の脈管内浸潤もありませんでした。
しかしながら通常猫の肺の腺癌は進行が早く再発のリスクもあるため今後は1ヶ月毎に再発の確認を行うことになります。

摘出した肺腫瘤です。黒丸内が肺腺癌でした。
病理結果は悪性の肺腺癌でしたが摘出状態は良好でした。
報告は以上です。肺腫瘍は犬も猫もまずは早期発見早期治療が大切です。
当院では健康診断やセカンドオピニオンも承っております。呼吸の事で気になることがあればお気軽にご連絡ください。

執筆担当
獣医師
西田純平

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