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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

脾臓に偶発的に腫瘤が見つかった犬の1例
【概要】
脾臓は犬の左脇腹付近位存在する古い血液を破壊したり、脾臓にあるリンパ球や形質細胞で病原体に対する抗体を生成している臓器です。犬の脾臓腫瘤は犬種や性別に関わらず中高齢以上の犬の中で比較的発生頻度が高いです。発生する腫瘤には良性と悪性があり、その比率は五分五分からやや悪性の割合が多いとされています。良性には血腫や髄外造血、血管腫や繊維種などがあり、悪性には血管肉腫、リンパ腫、平滑筋肉腫、組織球性肉腫をはじめとする数多くの種類の悪性腫瘍が発生します。中でも血管肉腫の発生率が最も高く、脾臓の悪性腫瘍の中の半数ほどが血管肉腫と言われています。血管肉腫は血液を介して肝臓や心臓への遠隔転移を非常に起こしやいので早急の治療が必要です。
【検査】
脾臓の腫瘤は初期は症状を出さないこともあります。脾臓の腫瘤の存在自体は腹部X線検査や腹部エコー検査で診断する事ができます。脾臓の腫瘤の病名の確定診断は画像検査で行うことはできません。そのため賛否はありますが、腫瘤部分に針を穿刺して細胞を回収する針生検という方法を用いて診断をすることはあります。しかしながらこの方法には出血のリスクや腫瘤が悪性の場合に悪性の細胞を周囲組織に播種させてしまう恐れもあります。また良性の血腫であっても腹腔内で出血を起こし、貧血を低してしまう事があるので、画像検査で悪性所見を疑ったり腫瘤のサイズが大きくなる場合は脾臓の摘出を実施する事があります。
【症例】
トイプードル 避妊雌 14歳
今回下痢と嘔吐を主訴に来院された際の腹部超音波検査にて偶発的に脾臓に腫瘤が認めらました。腫瘤自体は1.2cm大と比較的まだ小型でしたが、一般状態も良好な為早期のCT画像検査での全身の精査及び脾臓摘出を実施しました。
幸いCT画像検査で脾臓以外の臓器の問題は見られず脾臓の摘出もスムーズに完遂されました。
摘出後の病理診断は結節性過形成で良性のものでした。
結節性過形成は犬の脾臓の腫瘤性病変の中で比較的発生率が高いものです。結節性過形成は良性の為遠隔転移を起こしませんが、血腫の原因となることがあり、腹腔内で出血を起こす可能性があります。脾臓摘出後は良好な予後が期待されます。

当院では多くの腫瘤性病変の摘出を行なっております。
ご相談がある方はお気軽にご連絡ください。
執筆担当
獣医師 西田
※赤丸内が腫瘤性病変

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