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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

前十字靭帯断裂(TPLO法)
⚫︎前十字靭帯断裂とは?
前十字靭帯とは大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯で、膝の安定性を保つ上でとても大切な役割を担っています。
この前十字靭帯が断裂してしまうことで歩行異常(破行)を引き起こします。
原因としては加齢や肥満、若齢時からの膝蓋骨内方脱臼による慢性的な靭帯への負荷などが考えられています。
散歩中や低いところからのジャンプなど、ちょっとしたことで急性発症することが多い病気です。
また、チワワやトイプードル、ヨークシャテリアなど断裂が起こりやすい犬種も報告されています。

⚫︎診断
問診をはじめ、視診、触診を行いレントゲン検査、超音波検査により総合評価を行います。
レントゲン検査の画像です。
右側が正常で左側が前十字靭帯が断裂してしまった脚です。
赤い矢印で示した部分がファットパットサインと呼ばれるもので、関節液が貯留することでうっすらと白い影が見られます。
また、膝関節が不安定になることから脛骨が大腿骨の前方へ変位します。マーカーのラインが正常ラインですが、左側は前方へ変位していることがわかります。

⚫︎治療
小型犬において、2ヶ月程度の運動制限によって膝関節の不安定性が軽減し、最低限の生活ができるくらいまで歩行異常が改善することもありますが、損傷した靭帯が治癒することはありません。
前十字靭帯断裂の治療は大きく保存療法と外科療法の2つに分けられます。
保存療法は主に痛みの緩和を目的とし、痛み止めや肥満な子においてはダイエットをすることで経過を見ていきます。
保存療法でも改善しない場合や膝蓋骨内方脱臼の併発など重度な症状がある場合には外科療法を推奨することが多いです。
外科療法の術式は様々なものがありますが、代表的なものは以下の2つです。
1つは「ラテラルスーチャー法」といい、人工靭帯を作る方法でもう1つは「脛骨高平部水平化骨切り術(以下、TPLO法)」という前十字靭帯がなくても安定する膝関節を作る方法です。
近年、TPLO法の方が術後の経過が良好であるという報告が多くでてきており、当院でも力を入れて実施しております。
今回はTPLO法で手術をした症例を紹介させていただきます。
TPLO法とは下図のように脛骨を赤線の部分で切り、角度を変えて特殊なプレートでくっつけることで膝関節を安定させる方法です。
実際のレントゲン写真です。


⚫︎予後
TPLO法の1番の利点は機能回復が早いことで、比較的早く歩行することができる子が多いです。
また、前十字靭帯が切れることで関節炎が起こることは避けられませんが、手術をすることで進行を遅らせることができます。
今回紹介させて頂いた子は手術後3週間ほどで少しずつ歩き出すことができました。
当院では手術後のリハビリも力を入れており、近赤外線で刺激する機械や水中トレッドミルという、水の中で歩いて負荷を少なくして力ををつけてもらう機械も用意しております。

おうちのわんちゃんの歩き方が急におかしくなった、痛そうにしているなど気になることがありましたらお気軽にご相談ください。



動物医療センター 赤坂
獣医師 小針

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