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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

猫の糖尿病
【病態】
はじめに猫も犬もヒトと同じように糖尿病になってしまう事があることはご存知でしょうか?
まず糖尿病は一般的にⅠ型とⅡ型に分類されます。私たちヒトがなり易い糖尿病は家族歴、肥満などの危険因子、原因不明のインスリン抵抗性などが原因とされるⅡ型糖尿病です。完全同一かは不明ですが、猫もヒトのⅡ型糖尿病と類似の病態を示すことが多いです。猫の糖尿病では肥満(去勢雄)が危険因子ですが、明らかな家族歴は知られていません。猫で認めるインスリン抵抗性の多くは投与されている薬剤や膵炎や感染などの併発疾患に起因します。
ちなみにⅠ型糖尿病は自己免疫あるいは特発性に膵β細胞が破壊されて、絶対的なインスリン不足により発生します。猫でⅠ型糖尿病になる事は非常に稀です。

【臨床症状】
糖尿病になると多くの猫が多飲多尿や多食になるにも関わらず体重が減少する、といった症状を示すようになります。また普段爪先立ちのように歩く猫が、糖尿病になると一部の子では神経の異常で踵を地面につけて歩くようになります。
糖尿病の急性の代謝性合併症である糖尿病性ケトアシドーシスになると、異常な高血糖や高ケトン血症および代謝性アシドーシスにより全身が重度の脱水状態に陥り、悪心や食欲不振、場合によっては相当ぐったりした状態に陥り、最悪の場合は命を落としてしまう事があります。

【診断】
まず血液検査の一般生化学項目である血糖値が高値を示した場合に初めて糖尿病を疑います。しかしながら血糖値はストレスにより同じように高値を示すことがあり、高値が採血時のストレスに因るものか、もしくは糖尿病に因るものかは判定が難しいことがあります。
その場合次に尿検査で尿中の糖の有無の確認を行い、直近2週間の血糖値の推移を示す指標が分かる血液検査を外注します。 糖尿病は読んで字のごとく尿中に糖が出る病気なので尿検査は非常に重要です。また自宅で常に過度のストレス状態の子はあまりいないので、病院内で測定した血糖値よりも、直近2週間の血糖値の推移の検査の方が糖尿病の診断には有用性が高いと言えます。

【治療、予後】
通常猫の糖尿病治療にはインスリン注射が用いられることが多いです。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中のブドウ糖を細胞が取り込みエネルギーに変換するのを助ける役目があります。インスリン注射で血糖値を100~300の間に安定させる事で、合併症の予防や臨床症状の改善が見られます。インスリン注射の他に、食後急激な血糖値の上昇がないように糖尿病の子専用のフードを用いる事も多いです。治療の注意点はインスリン注射により猫を低血糖状態にさせない事と、インスリンが効きにくくなり合併症を発症させない事です。その為に定期的な健診が通常必要となります。
予後に関しては常に注意が必要な病気ですが、しっかりと合併症を予防できれば、健康な猫ちゃんと変わらず寿命をまっとうできる子も多くいます。
糖尿病でお困りの猫ちゃんがいらっしゃる飼い主様、もしくは最近飲む水が増えた子がいらっしゃる場合はお気軽に当院へご連絡ください。
執筆担当
西田

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