犬の子宮蓄膿症
⚫︎概要
子宮蓄膿症とは、発情による刺激を受けて肥厚した子宮内膜に細菌感染が起こることにより、子宮内に膿が貯留してしまう病気です。犬の子宮蓄膿症は、避妊をしていない雌で特にこどもを産んだことのない犬に見られることが多く、発症しやすい平均年齢は8〜10歳と言われています。
⚫︎発症時期
犬の発情は通常年に1〜2回きます。
犬は発情前期に生理(発情出血)が起きてから発情期を迎え、発情休止期に至ります。
子宮蓄膿症は黄体ホルモン(プロジェステロン)が関係しており、発情休止期に起こりやすく、発情出血(生理)が起きてから1〜2ヶ月にかけて発症することが多いです。
おうちのわんちゃんの発情周期(いつ生理が来たか、どのくらいたったか)を意識してみておくことで、異変に気づくこともでき、早期発見につながります。
⚫︎診断
臨床症状・発症時期・血液検査・画像診断から総合的な判断をします。
初期段階では無症状のことが多いですが、病気が進行してくると
・多飲多尿
・元気消失
・嘔吐、食欲不振
・外陰部からの滲出液
・触診時の腹部痛
などがみられます。重症化してしまった場合、細菌に体が負けてしまい、敗血症や多臓器不全に陥ってしまうことがあります。
画像診断では、レントゲン検査と超音波検査をあわせて行っていきます。
レントゲン検査では子宮の腫大がみられ、超音波検査では、子宮内部の液体の有無・子宮壁の肥厚などがみられます。
⚫︎治療
治療は、まず第一選択が手術になります。動物の全身状態が非常に悪い場合・将来的に子どもが欲しいなどの理由で飼い主様が手術を望まない場合は内科療法を選択することもあります。しかし、内科療法の場合、2年以内にほとんどが再発してしまい、再発した場合に加齢により悪化してしまうリスクも高くなってしまうため一般的には卵巣子宮摘出術(避妊手術)を行います。
実際に外科手術で摘出した子宮の写真です。
⚫︎予後
外科療法の予後は一般的には良好です。
しかし、重症化してしまった子は危険性が高くなってしまいます。
⚫︎予防
上記のとおり、おうちのわんちゃんの発情周期・いつもと変わりがないかということをを意識してみることで早期発見につながります。
また、子宮蓄膿症は、避妊手術で予防することができます。
では、病気になってから避妊手術をすればいいのでは?とお考えになるかもしれません。
しかし、病的子宮の摘出は、中高齢であることも加え、手術そのもののリスクが高くなります。さらに、発見が遅れて合併症を起こしていることもしばしば見られますので、避妊手術と同じ条件でできる手術では決してありません。将来、子犬を望まないのであれば、発症好齢期前に避妊手術を行うことをお勧めします。
当院では通常の開腹による避妊手術に加え、腹腔鏡下でできる、痛み・傷を最小限にできる術式も取り入れています。
腹腔鏡下での予防的避妊手術についての詳細はこちらをご参照ください。
『腹腔鏡下での避妊手術』
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動物医療センター 赤坂
獣医師 小針