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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

腹腔鏡下での胆嚢摘出術を実施した犬の1例
【始めに】
胆嚢とは肝臓の一部に隣接した袋状の臓器です。肝臓で作られ十二指腸に分泌される消化液である、胆汁(たんじゅう)を溜める働きをしています。
本来胆嚢内部は液体状の胆汁で満たされていますが、加齢や犬種特異性で胆嚢内や胆嚢から十二指腸への通り道である胆嚢管や総胆管に結石ができたり、詰まったりして重篤な症状を呈してしまう子がいます。また胆嚢内で感染が成立して胆嚢の炎症を起こしたり、胆嚢内にゼリー状の構造物が増えて胆嚢が破裂してしまうこともあります。
その為重篤な症状を引き起こすリスクのある胆嚢を有する子に対して、予防的な胆嚢摘出術を行うことがあります。
当院では通常の開腹手術だけではなく、小さな傷と術野の映像を拡大しながらより安全に手術を行うことができる、腹腔鏡を用いた胆嚢摘出を実施しています。
※腹腔鏡で胆嚢を摘出できる子には体格、胆嚢の状態等の条件がございます
【症例】
犬種:MIX犬
年齢:12歳
体重:約9kg
かかりつけ病院さんの紹介で来院されました。胆嚢内にゼリー状の構造物が増える『胆嚢粘液嚢腫』という状態であり、血液検査の肝酵素値も少し参照値より高値でした。来院時の体調は問題なく、また麻酔リスクも高くなかった為、腹腔鏡下での胆嚢摘出を実施する事となりました。
【術式】
始めにカメラや器具を入れる為の5-10mm大の穴を4箇所切開しました。次に胆嚢の出口である胆嚢管と胆嚢へ血流を送る胆嚢動脈を専用器具でクリップして胆嚢からの出血が少なくなる様にします。胆嚢と肝臓をくっつけている薄い膜である漿膜を慎重に剥離して、全て胆嚢と肝臓が接する部分がなくなった後に、胆嚢をクリップを止めた胆嚢管の位置でクリップを体内に残す形で切断します。最後に万が一胆嚢から刺激性のある胆汁が漏れ出ても大丈夫な様に専用の回収巾着袋に入れて体外に取り出します。 この時胆嚢が体外に出せる様に、最初に開けた穴の1箇所を胆嚢が出る大きさまで最低限切開します。最後に穴と皮膚を縫合して手術終了です。
※手術の様子
※摘出した胆嚢です
術中の胆嚢管クリッピングの様子
【術後】
手術の次の日には歩けるまで回復してくれました。術後3日くらいで食欲も改善し術後5日ほどで走り回るまで回復しました。
血液検査上の目立った術後の異常も認めず経過は良好です。
※手術後2日目の術創写真
当院では低侵襲で行える腹腔鏡手術を胆嚢摘出以外にも多数行っております。
避妊手術、腹腔内精巣摘出、膀胱結石摘出、予防的胃固定、胸腔鏡を用いた手術等
〈腹腔鏡下避妊手術〉
〈腹腔鏡下膀胱結石摘出術〉
詳細はお気軽にご連絡ください。



執筆担当
獣医師 西田

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