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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

犬の心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)
⚫︎僧帽弁閉鎖不全症とは?
心臓の中では血液は一方通行で流れており、そのために各心臓の部屋には弁がついています。
そのうちの一つ、左心房から左心室の間にある弁を僧帽弁といいます。心臓の左側は全身に多くの酸素を含んだ血液液を送る大切な役割をしています。
模式図は以下の通りです。
『僧帽弁閉鎖不全症』というのはこの僧帽弁もしくは弁を動かしている腱索が加齢に伴い変性、断裂してしまうことで、左心室から左心房へ血液が逆流している病気です。

中年齢〜高年齢で発症することが多く、小型〜中型犬、特にトイプードル、チワワ、キャバリアキングチャールズスパニエル、ダックスフンドに多い病気とされています。

⚫︎症状
血液の逆流の量が少なければ症状は現れませんが、聴診で心雑音が聞こえます。
悪化してくると元気がない・疲れやすいなどの症状、心臓が大きくなることで気管や気管支が押され、咳の症状が出てくることが多いです。
また、重症になると肺に水がたまってしまう、「肺水腫」という病態になり、呼吸促迫などがみられることもあります。

⚫︎診断・治療
僧帽弁閉鎖不全症は『A,B1,B2,C,D』の5つのステージに分類されます。
診断は、聴診・レントゲン検査・心臓超音波検査・血液検査・血圧測定・心電図検査などをもとに行っていきます。レントゲン検査では心臓の大きさ、超音波検査では逆流の程度や心臓の収縮力などを評価します。
治療のスタートはステージB2の子が対象になります。
具体的には、内科療法では心臓の収縮力を高める強心剤や重症の子には利尿剤などの投薬をおこなっていきます。心臓病の内科的療法は基本的には一生涯続けていくことになります。
また、近年では外科手術により根治を目指すという選択肢も可能となりつつあります。
現在は大学病院や一部の専門病院でしか実施されていませんが、当グループでも2016年より開胸手術による僧帽弁形成術を行っています。

健康診断等で心雑音があると診断されても、症状が出るまで数ヶ月〜数年かかることもあります。病態が軽度〜中程度の子では、治療により安定した状態を年単位で得られる可能性もあります。予後は、心臓ももちろんですが、年齢や腎臓病など他の疾患の有無が大きく関わってきますので定期的な健康診断をおすすめします。

当グループでは最新の心臓超音波機器を設備し、心臓の専門認定医による診断・治療を行なっております。気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆担当
獣医師 小針

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