腹腔鏡下避妊手術と予防的完全腹腔鏡下胃固定術を同時に実施した1例
<はじめに>
犬ではご飯の早食いや、水を一気飲みをする事で胃が急激に膨らんだり、ねじれてしまう「胃拡張・胃捻転症候群」という緊急性の非常に高い病気が起こることがあります。
特に大型犬や胸の深い犬種などでは発症リスクが高く、一度発症すると命に関わることが多く、緊急手術を必要とします。
予防的胃固定術は、将来的な胃のねじれを予防することを目的として、胃の一部をお腹の内側の壁に固定する手術です。
今回の手術では、将来的な胃捻転のリスクを考慮し、症状が出る前の「予防」を目的として胃固定術を、普段から多く実施されている腹腔鏡下避妊手術と同時に完全腹腔鏡下で実施しました。
<症例>
犬種:フラットコーテッドレトリーバー
年齢:12ヶ月齢
体重:26.9kg
腹腔鏡下での胃固定術を希望されて来院
<術式>
まず腹部3箇所を約1cm程切開します。その後に腹腔内が視認できるように二酸化炭素を用いて腹腔内を膨らませて、カメラを挿入し、子宮卵巣を確認したら電気メスなどを用いて腹腔鏡下での避妊手術を実施します。(以前は避妊手術も3箇所切開で実施していましたが、現在は避妊手術だけであれば切開は2箇所です。避妊手術だけであれば通常30分程度で終わります。詳しくはこちらのリンク先を参照ください。)
避妊手術について詳しくはこちらをご覧ください。
→ 避妊手術の症例紹介はこちら
腹腔鏡手術専用器具を入れるポートを設置
胃の幽門部(胃の出口)を腹壁に仮固定
胃の漿膜面(外側)を電気メスで焼烙
腹壁を電気メスで焼烙①
腹壁を電気メスで焼烙②
胃と腹壁の焼烙した面同士を専用の糸で連続縫合
胃と腹壁の予防的胃固定完成
青色が開腹下での避妊手術と胃固定の同時実施の想定術創、赤色が今回の術創
<まとめ>
腹腔鏡を使用することで、カメラで腹腔内を確認しながら、必要な部分だけを小さな切開から操作できることが特徴です。
「胃がねじれてしまってから治療する」のではなく、将来の胃捻転を予防するために、症状がない段階で胃を固定しておく。
それが今回の予防的胃固定術の目的です。
今回は避妊手術と胃固定を同時に実施しましたが、開腹下で実施する場合に比べて術創を半分以下にすることができました。
予防的腹腔鏡下胃固定術について気になることがある方は、お気軽に港区赤坂にある動物医療センター赤坂までお気軽にご連絡ください。
執筆担当
獣医師
西田